株式会社大勢シェル
- メーカー(機械・電気・電子)
- 島根県松江市
登録企業情報OPERATING COMPANY
株式会社大勢シェルは、松江市揖屋にある鋳造用中子の製造会社です。中子(なかご)とは、鉄を溶かして型に流し込んで固める「鋳造」に使う鋳型の一種です。そのようにして出来上がった製品を鋳物(いもの)と言いますが、中に空洞がある鋳物を造る時、その空洞にあたる部分として鋳型の中にはめ込むものが中子です。これらの鋳型は特殊な砂でできています。
この中子は、古代から鋳造に欠かせない技法として伝えられてきました。出雲の地で数多くの銅鐸が出土されていることもそれを物語っており、現代でもあらゆる分野でものづくりを支えているのです。
当社では、特に技術の向上を図ってきました。鋳造の時に使う中子の品質によって、取引先でそれを使って製造される鋳物の品質が左右されます。高品質な中子を提供する当社は、鋳物を造る取引先から、「難度の高い仕事を頼むなら大勢シェル」と言われるほどの、全国でトップテンクラスの生産量を誇る企業となったのです。
中子製造は、自動車部品、建設関連、農業機械、船舶関連、油圧関連など多岐に渡りますが、とりわけ多い仕事は自動車部品関連で、2013年7月には過去最高の出荷高を記録しました。また、中子製造に関連する機械を社内用に自社開発したところ、社外から評判が良く、国内外からも発注が来るようになっています。
小澤俊孝社長は、「下請け感覚を捨て、技術を提案出来るように研究し、業界の不自由に取り組む姿勢が大切」と教えています。だからこそ「品質が最大の営業」と自信を持って言えるのです。
中子は多くの鋳物製造に使われ、中子がなければ自動車も半導体製造装置も造れません。精密さが必要な上に、出来上がった鋳型の中に納められるため、鋳物の製造中は見ることができません。どのように溶けた鉄が流れ込んで固まるかなどを考える、高い想像力と技術力が必要とされます。
小澤社長は商業系の学校出身でしたが、「ものづくり」が好きで、中子製造のもつ「目では見えない」面白さと技術の世界にどんどん魅了されていきました。「一見ローテクだが、進化し続ける最先端の仕事がここにはあります。そこがワクワクします」と小澤社長は言います。鋳物の空洞を形作っていた中子自体は、鋳物製品が出来ると同時に崩され、単なる「砂」に戻ります。この残らない仕事は、いわばものづくりの「黒子役」であり、精密な鋳物製品を残して消えて行く中子にロマンを感じるのです。
社員に対しては、「たくましく育ってほしい」「生きる力を身に付けてほしい」「自分で判断して、自分の道は自分で切り開いてほしい」と考えています。「社員が成長する為のチャンスはいくらでも与える」と、と小澤社長は話します。しかし、社員にはあれこれ言いません。放任に見えるほどですが、社員に日々目を向け、見守っている姿から、小澤社長の愛情を感じます。だからこそ社員一人一人が自然と責任感を身に付け、成長が出来るのです。
この会社を選んだ理由は、当社で働いていた友人から話を聞き、「こんな技術レベルの高い会社で働きたい!」 と思ったからです。
仕事の話をすると、誰からも必ず「中子って何?」と言 われます。そんな誰も知らない仕事というのは、当たり 前じゃなくて面白いと思います。作業中は熱いし、製品は重く、体力的にはキツいですが、イメージした通りの中子が出来た時は凄く気持ちが良く、達成感もあり、日々自信を積み上げています。今では後輩の指導もしていますが、後輩に分かりやすい言葉を考えて教えることで、自分も勉強になります。
このように成長出来たのも、社長がよく口にする言葉で もあり、会社の行動指針でもある「自己責任」のおかげだと思います。中子の仕事は目に見えない分、自分で想 像して、考えながらしなければなりません。また、技術力の高い企業イメージを損ないたくないと思い、今は常に自己責任の上で取り組む事を肝に命じています。それが、仕事に対してのプライドに繋がっています。
中子の仕事は黒子役!最後は消えて無くなる仕事。そこにこそロマンが存在する